友よ!

心の動き、それも激しい動揺だけでなく
ちょっとした心情の変化や、なんとなく、という程度の心の移ろいを
とても丁寧に描く人だなと思う。
それがとても心地よくて、ああもっと読み続けたいなあと思うのに
夢中でページを繰ってあっという間に読み終えてしまう。
読書というのは本当に、贅沢なものだなあ。


村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)


「家守綺譚」の水底のような静けさと比べると、こちらは随分とにぎやかだ。
さまざまな匂いがあり、音がある。
街の喧騒と埃の匂い。珍しい果実や初めて味わう異国の料理の味。
いろんな国の人間がそれぞれの言葉で語るそれぞれの国の暮らし。


雑多な物や雑多な人々と一緒に暮らすうちに、少しずつ
自分や周りの人間に変化が現れる。
迎合したり服従したりするのではなく、お互いを認め合う変化。
相手のことを大事に思い、尊重する気持ち。そして
同じように自分自身を大事にする気持ち。矜持。


久しぶりに、「あらまほしい」という言葉が浮かんだ。
日本人の、あらまほしい姿。
私自身もこうありたい、と心から思った。